共感(きょうかん、英語: empathy)とは、他者の感情や経験を自分のことのように理解し、感じ取る心理的なプロセスを指します。単なる同意や賛同とは異なり、「他者の内面の世界に入り込み、そこから物事を理解する」という深い対人理解の能力です。
🔍 専門的定義・分類
1. 共感の定義
心理学や神経科学、哲学などでさまざまに定義されていますが、共通する核は以下の通りです:
- 感情的共感(Emotional empathy)
他者の感情を自分も感情的に感じること。例:「相手が悲しんでいると、自分も悲しくなる」 - 認知的共感(Cognitive empathy)
他者の心的状態(考え・意図・感情)を知的に理解すること。例:「彼は怒っているのは、自分の発言が侮辱的だったからだと理解する」 - 共感的関与(Compassionate empathy / Empathic concern)
理解や感情だけでなく、その人を助けたい・支えたいという動機が生まれる。例:「困っている人を見て、何かしてあげたいと行動に移る」
🧠 神経科学における共感
近年、脳科学の研究によって共感に関連する脳部位が特定されています。
- 前帯状皮質(ACC):他者の痛みに共鳴するときに活性化
- 島皮質(insula):自己と他者の感情状態をモニタリング
- 鏡ニューロン系(mirror neuron system):他者の行動や感情を見て、自分もそれを再現する神経基盤
これにより、「共感」は単なる文化的・倫理的なものではなく、生物学的・神経的に根ざした能力であることが示されています。
📚 心理学的背景・理論
1. ホフマンの発達理論(Martin Hoffman)
子どもの共感能力は段階的に発達するとされる:
| 年齢 | 共感の特徴 |
| 0歳 | 反射的な共感(他者の泣き声で泣く) |
| 1-2歳 | 自己と他者の区別がつき、他者の苦痛を意識する |
| 3-6歳 | 他者の視点をとることができるようになる(認知的共感) |
| 小学生以降 | 社会的規範や文脈に応じた共感行動ができるようになる |
2. バトソンの共感-利他性仮説(Batson’s Empathy-Altruism Hypothesis)
- 他者への共感的感情が生まれると、利他的動機(報酬や見返りを期待しない援助行動)につながる。
🤝 共感とその他の概念の違い
| 概念 | 意味 | 共感との違い |
| 同情(sympathy) | 他人の不幸に対してかわいそうだと感じる | 共感は他人の視点に立って感じるが、同情は上からの視点になりやすい |
| 想像(imagination) | 他人の状況を想像する | 共感は想像を超えて感情を共有する体験を含む |
| 投影(projection) | 自分の感情や価値観を他人に当てはめる | 共感は他者の独自の経験を尊重する |
🧠 精神疾患やパーソナリティにおける共感の位置づけ
- 自閉スペクトラム症(ASD):認知的共感が困難なことが多い(感情的共感は保持している場合もある)
- 反社会性パーソナリティ障害(ASPD):感情的共感が著しく欠如している
- ナルシシズム:他者の感情への関心が薄く、共感的行動が制限される
🌍 社会・文化との関係
共感の表現や重要性は文化によって異なります。
- 個人主義文化(例:アメリカ):自己表現や個別の共感が重視される
- 集団主義文化(例:日本):暗黙的な理解(空気を読む)が共感として機能する
✅ まとめ:共感とは
| 項目 | 内容 |
| 定義 | 他者の感情・視点・状況を理解し、感情的に反応する能力 |
| 種類 | 感情的共感・認知的共感・共感的関与 |
| 神経基盤 | 前帯状皮質・島皮質・鏡ニューロンなど |
| 関連理論 | ホフマンの発達段階・バトソンの利他性仮説など |
| 社会的意義 | 対人関係・教育・福祉・医療・ビジネスにおいて不可欠 |
次に、「共感」について、より専門的かつ体系的に深掘りしてご説明します。
🔍 共感の多角的分析(専門的詳細)
1. 【心理学的視点】共感の構成要素と分類
■ A. 感情的共感(Emotional Empathy)
- 定義:他者の感情を自分のもののように感じること
- 例:友人が失恋して泣いているのを見て、自分も涙が出てくる
- 特徴:
- 自動的・本能的に起こる
- 鏡ニューロンや身体反応(心拍の上昇、表情模倣)と密接に関係
- リスク:感情的巻き込まれ(emotional contagion)によるバーンアウトや共感疲労(compassion fatigue)
■ B. 認知的共感(Cognitive Empathy / Perspective-taking)
- 定義:他者の立場に立って、感情や思考を知的に理解する能力
- 例:「この人はあの状況で怒るのは当然だ」と理性的に理解する
- 特徴:
- 社会的認知(social cognition)の一種
- 心の理論(Theory of Mind)と深く関連
- 発達段階で遅れて出現(4〜5歳以降)
■ C. 共感的配慮(Empathic Concern / Compassionate empathy)
- 定義:他者の苦しみに感情移入し、支援したいという利他的動機が生まれる
- 例:「あの人を助けたい」と思って行動に出る(寄付・看護・支援など)
- 特徴:
- 感情的+認知的共感が統合されて行動に変換される
- 社会的・道徳的行動の原動力となる
2. 【神経科学的視点】共感の脳内メカニズム
■ 関連脳領域と機能
| 脳部位 | 機能 | 関与する共感の側面 |
| 前帯状皮質(ACC) | 苦痛の知覚、情動的反応 | 感情的共感、痛みの共鳴 |
| 島皮質(Insula) | 内受容感覚(自律神経的感情) | 情動共感、身体的共鳴 |
| 側頭頭頂接合部(TPJ) | 他者の視点の理解 | 認知的共感、心の理論 |
| 前頭前野(PFC) | 自己制御・判断 | 認知的制御、他者との境界維持 |
| 鏡ニューロン系(MNS) | 他者の動作や感情の模倣 | 非言語的共感(表情、動作の模倣) |
3. 【発達心理学的視点】共感の成長段階
Martin Hoffman(1975)の「共感の発達段階」
| 年齢 | 発達段階 | 特徴 |
| 新生児〜1歳 | 共感的苦痛反応 | 他者の泣き声に反応(反射的共感) |
| 1〜2歳 | 自己と他者の区別 | 他者の苦痛を理解しようとするが、自分の視点で解釈する |
| 2〜3歳 | 他者視点の理解 | 感情を他者に向け始め、慰める行動などが出現 |
| 3〜6歳 | 感情の多様性理解 | 状況に応じた感情の違いを理解できるようになる |
| 小学生〜 | 社会的文脈の理解 | 他者の視点・感情を抽象的に理解し、倫理的判断にも関与 |
4. 【哲学的視点】共感の存在論的・倫理的意義
■ エディト・シュタイン(Edith Stein)
- フッサールの現象学を受け継ぎ、「共感とは自己とは異なる意識の存在を直接経験すること」と捉える
- 他者性(Alterity)への橋渡しとして共感を重視
- 共感は単なる知覚ではなく、「他者の生きられた経験」への直観的アクセス
■ ハンス・ゲオルク・ガダマー(Hans-Georg Gadamer)
- 対話における理解の基盤としての共感
- 共感とは「他者の世界観に一時的に自分を預ける行為」
5. 【臨床・精神病理学的視点】共感の障害
■ 自閉スペクトラム症(ASD)
- 認知的共感(心の理論)の困難が中心
- 感情的共感は保持されているケースも(例:動物や音楽には強く共感する)
■ サイコパス・反社会性パーソナリティ(ASPD)
- 感情的共感の著しい欠如
- 他者の感情を認知的には理解できるが、それに伴う内的反応がない(利用はするが、感じない)
■ 境界性パーソナリティ障害(BPD)
- 過剰共感や自己境界の弱さが問題となる
- 他者の情動に巻き込まれやすく、自己同一性の混乱を引き起こすことがある
6. 【応用領域での共感】
| 分野 | 共感の重要性 | 活用例 |
| 医療・看護 | 患者の苦痛への理解とケア | 患者中心の医療、緩和ケア |
| 教育 | 子どもの感情理解と関係構築 | ソーシャル・スキル教育(SEL) |
| 福祉 | 支援対象者への心の理解 | ケースワーク、対人支援 |
| カウンセリング | 共感的理解による治癒的関係 | ロジャーズの来談者中心療法 |
| ビジネス | 顧客や部下への感情的理解 | サービストレーニング、リーダーシップ育成 |
✅ 総まとめ:共感の学際的理解
| 領域 | 共感の焦点 | 学術的意義 |
| 心理学 | 感情・認知のプロセス | 対人理解・支援行動の基盤 |
| 神経科学 | 脳活動・神経ネットワーク | 社会的脳の構造的理解 |
| 発達心理 | 成長に伴う変化 | 教育・育児への応用 |
| 哲学 | 他者性・存在論的関係 | 倫理・人間理解の根幹 |
| 臨床心理 | 心の病と共感力 | 診断・支援・治療の指針 |
💬最後にひとこと
共感とは脳のメカニズム、身体のメカニズムともに学んでいくととても面白いです。
人と人がその場所に存在をするだけで様々な共感が起こり神経系の影響、その影響による身体異常、身体の硬直、瞳孔のひらき、など様々な事柄に関わってきます。
目で実際に共感の意識などが見れる能力ある方は観察をしてみて下さい。
気と気が混ざり合う瞬間にどういったことが起こるのか、感情の変化もみれる方は見てみて下さい。そして、さらにどの程度の共感力を1人1人が持っているのかによるエーテルコードの本数や気の意識の向け方、気の使い方なども見られると身体改善がとても早くなっていきます。
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