ADHD(注意欠如多動性障害)とは
ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略です。
「注意欠如・多動症/注意欠陥・多動性障害」とも呼ばれ、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。自閉症スペクトラム障害に合併することも多い。
忘れ物が多い・課題が間にあわない・うっかりミスが多いなどの「不注意症状」と、じっとしていられない・落ち着かない・待つのが苦手などの「多動性・衝動性症状」がみられる神経発達症・発達障害の一つと考えられています。症状の現れ方によって「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」と分類されます。
ADHDは、不注意や多動性・衝動性の症状が同年代よりも強く認められ、症状の少なくとも一部は小さいころから連続して存在していたと考えられ、さらに学校や職場や社会で、その症状のためにうまくいかず困っている状態が確認された場合に診断されます。
ADHDは過去には注意欠陥障害(ADD)と呼ばれていましたが、ADHD児に多動性も多くみられるため、現在の病名に変更されました。多動性とは、実際には注意欠如と衝動性が身体面にまで及んで現れたものです。
ADHDの診断については、アメリカ精神医学会(APA)のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)に記述されており、下記などの条件が全て満たされたときにADHDと診断されます。
- 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
- 症状のいくつかが12歳以前より認められること
- 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
- 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
- その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと
このようにADHDの診断は医師の診察で観察された行動上の特徴に基づいて行われ、それ単独で診断ができるような確立した医学的検査はありません。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の大人
近年、 大人のADHDも増えていますが、大人になってから初めて出現するものではありません。本人の人間性や知能などに問題はないのに、社会適応性が悪かったり、親密な人間関係の持続が困難になったりすることが多いため、仕事や人間関係がうまくいず、生きづらさを感じる、あるいは抑うつ気分や不安感が強く悩みがちです。自尊心が低下して、うつや不安の状態になりやすいです。
不注意、多動性、衝動性という3つの症状に、子どものころからずっと悩まされて、多くの人は自分なりの工夫や対策を考えて努力していますが、それにもかかわらず、大人になり、うまく生活することができず困ってしまいます。
日常の活動(たとえば、掃除にかかる時間、歩くスピードなど)すべてにわたる能力や行動であるパフォーマンスが落ちていきますが、気のせいだと判断して、自分が病気であることに気づかない場合もあります。
症状
ADHDには以下の4つの病型があります。
①不注意…集中力が続かず注意力が持続できない
②多動型…じっとしていられない、落ち着きがなく行動をコントロールできない
③衝動型…衝動的な感情を抑えられない
④混合型
多少なら、誰にでも当てはまると感じられるかもしれません。しかしADHDの場合は、特性がとても強く、長年にわたって続きます。そのため周りとのトラブルや日常生活での支障が出てしまいます。本人の努力不足や怠けているなどと誤解され、悩んでいる人も少なくありません。
主な症状
①不注意型
うっかり間違いが多いタイプです。
忘れ物をしたり、約束を忘れてしまうということは、誰しも経験があると思います。
しかし、ADHD の方の場合、うっかりの度合いが大きかったり、頻度が高かったりします。
忘れ物が多い、外からの刺激などですぐに気がそれやすく、授業中や物事に集中し続けることの苦手さがあるなどの特徴があります。また、整理整頓が苦手な人もいます。
一方で、自分の好きなことについて考えたり取り組んだりしていると、話しかけられても気づかず、周囲の人に「無視をした」と誤解されることもあります。
目に見える形では動きは少ないが、 「頭の中が多動な状態」です。
- 細かい注意を払うことができない
- 不注意から失敗することがよくある
- 注意を持続しつづけることが難しい
- 指示されたことをやり遂げることができない
- 順序立てて課題を進めることが難しい
- 継続して課題に取り組むことが難しい
- よく必要な物をなくす
- よく関係ないことで気が散る
- 忘れる・抜け漏れることがある
- ケアレスミスが多い
- 外からの刺激を受けるとすぐ気がそれる
- 気が散りやすくて、物事に集中することが苦手、または集中力が続かない
- やりたいことや好きなことに対しては積極的に取り組めるが、集中しすぎてしまう
- 片付けや整理整頓が苦手
- 約束や時間を守れないことがある
- 勉強や遊びに注意を持続させることが困難である
- 直接話しかけられても聞いていないように見える
- 話を聞いていないと思われ、指摘をされる
- 言われたことをやり遂げられないことが多い
- 課題や活動を手際よく行えないことが多い
- 精神的な集中力が必要な課題に取り組むことを避けたり、嫌ったり、やりたがらないことが多い
- 物事の優先順位を考え、計画をたてるのが苦手。宿題や仕事を先延ばしにしたり、ためこんだりする。
- 遅刻が多い。または遅刻しそうなことが多い
- スケジュール管理ができない
- 行動がワンテンポ遅れる
- 何かに「はまる」とほどほどでやめることができず抜け出すことができない(読書やネット、ゲームなど)
- 忘れ物が多い
- 何かやりかけでもそのままほったらかしにする
- 集中しづらい
- ぼーっとしているように見える
- 同じことを繰り返すのが苦手
- 勉強などで不注意な間違いをする
- 約束の時間に遅れたり、約束を忘れたり、締め切りに間に合わなかったりすることが多い
②③多動型・衝動型
動いていないと気分的に落ち着かない、ひとつの物事にじっくり取り組んだり、ひとつの場所にじっと留まることを好みません。無意識のうちに身体が動いてしまい、じっとしていても内心は落ち着かないことが多くあります。
気持ちのコントロールや欲求のコントロールが苦手などの特徴があり、じっくり計画を立てて行動するよりも、思いついたら即行動という場合が多いです。
- 手や足を絶えず落ち着かなく動かしたり、体をくねらせたりねじったり、座っていても動きたくなってしまうなど、体を動かすことがやめられない
- じっと着席しつづけるのが難しく席を離れてしまう
- じっとしていられないような気分になる
- 静かに遊びや余暇活動に取り組むことが難しい
- 他の人の活動を遮って邪魔をしてしまうことがある
- 学童期では走り回ったり、高いところに登ったりする
- 人の話を最後まで聞かずに話し、相手の言葉を先取りして話してしまう
- 思ったことをすぐに口にしてしまったりする
- 順番を守れなかったり、他人の物を勝手に使ってしまったりする
- 絶えず動き回っていたり、モーターに動かされているように振る舞ったりすることが多い、じっとしていると落ち着かない
- しゃべりすぎることが多い
- 質問が終わる前に答えを口走ることが多い
- 落ち着きがなく注意を持続することが難しい、または困難である
- 順番待ちや交通渋滞、その他待つことが苦手
- おせっかいや余計な一言が多い
- ささいなことで手を出してしまったり、大声を出したりする
- おちついて見えるが内心は落ち着かない感じ
- 貧乏ゆすりなど目的のない動きをする
- 衝動買いをしてしまう
- 活動していないと落ち着かず、家で座って静かに過ごしていること(本を読んだり、テレビを見たり)ができない
- 他人と話していても話の筋を追えないことがある
- 話をよく聞いていても内容を忘れたりする
- 単調な仕事や読書、計算を持続することが苦痛である
④混合型
「不注意」と「多動 / 衝動性」の両方の特徴をもつ
自分に自信が持てない
ADHD の診断基準ではありませんが、ADHD のある人は幼少期から失敗経験が人よりも多く
「みんなとどうして同じようにできないのだろう」 「どうせ頑張ってもうまくいかない」 「ミスがないように気をつけても、同じ失敗をしてしまう」 など、自分に自信が持てなかったり、自尊感情が低かったりする場合があります。