電磁波過敏症(Electromagnetic Hypersensitivity:EHS)の症状に関する説明
1.電磁波過敏症(EHS)の概念
電磁波過敏症(EHS)とは、携帯電話、Wi-Fi、送電線、家電製品、電子機器などが発する電磁界(電磁波)への曝露を契機として、多様な身体的・神経学的・精神的症状が出現すると訴えられる状態を指します。
国際的には、EHSは明確な器質的疾患として確立された診断名ではなく、「環境不耐症(Idiopathic Environmental Intolerance)」の一亜型として位置づけられることが多く、症状は実在する一方で、その発症機序については現在も研究途上にあります。
2.電磁波曝露と生体反応の考え方
電磁波とは、電場と磁場が空間を伝播する物理現象であり、日常生活では以下のような発生源が存在します。
- 無線通信機器(携帯電話、Wi-Fi、Bluetooth)
- 電気配線・送電設備
- 家庭用電化製品
- 情報通信インフラ機器
EHSを訴える人では、これらの環境下において身体が過剰に反応していると自覚される状態がみられます。ただし、現時点の科学的知見では、通常の生活環境レベルの電磁波が直接的に器質的障害を引き起こすという一貫した証拠は確認されていません。
一方で、症状そのものは本人にとって明確かつ苦痛を伴うものであり、臨床的配慮が必要とされています。
3.主な症状の詳細
(1)神経系・中枢神経症状
EHSで最も多く報告されるのは、神経系に関連する症状です。
- 頭痛(締め付け感、拍動性、慢性頭痛)
- めまい、浮動感、平衡感覚の異常
- 集中力・記憶力の低下
- 思考の鈍さ、ブレインフォグ様症状
- 睡眠障害(入眠困難、中途覚醒)
これらは、自律神経系や中枢神経の調節異常が関与している可能性が指摘されています。
(2)自律神経・循環器系症状
- 動悸、頻脈
- 血圧変動
- ほてり、冷え感
- 発汗異常
- 倦怠感、易疲労性
これらの症状は、交感神経と副交感神経のバランスの乱れと関連づけて説明されることがあります。
(3)感覚器・皮膚症状
- 皮膚の灼熱感、チクチクする感覚
- かゆみ、しびれ感
- 皮膚の違和感(発疹を伴わないことも多い)
- 目の痛み、乾燥感、視覚の不快感
これらは、末梢神経の感受性亢進や感覚処理の過敏化として捉えられる場合があります。
(4)精神・心理的症状
- 不安感、緊張感の亢進
- 抑うつ気分
- イライラ、情緒不安定
- 社会的回避行動
- 強いストレス反応
これらの症状は、電磁波曝露への恐怖や予期不安と相互に影響し合い、症状を増幅させる悪循環を形成することがあります。
4.症状の特徴と経過
EHSとされる症状には以下の特徴が報告されています。
- 症状が非特異的で多岐にわたる
- 他覚的検査所見に乏しいことが多い
- 環境要因(場所・機器)によって症状が変動する
- ストレス状況下で悪化しやすい
- 睡眠や環境変更により軽減する場合がある
これにより、診断や周囲の理解が困難になりやすいという問題があります。
5.他疾患との関連・鑑別
EHSと類似した症状は、以下の状態でも認められることがあります。
- 自律神経失調症
- 不安障害・抑うつ障害
- 慢性疲労症候群
- 化学物質過敏症
- 睡眠障害
そのため、EHSが疑われる場合でも、包括的な医学的評価と慎重な鑑別が重要とされています。
6.日常生活および社会生活への影響
症状が慢性的に持続する場合、
- 電子機器使用の回避
- 外出や就労の制限
- 社会的孤立
- 生活の質(QOL)の低下
といった深刻な影響が生じることがあります。
特に「理解されにくい症状」であることが、心理的負担を増大させる要因となります。


