手足の多汗症(手掌多汗症・足底多汗症)に関する症状説明
1.多汗症の定義と分類
多汗症とは、体温調節や運動量に見合わない過剰な発汗が持続的または反復的に生じる状態を指します。
特に、手のひら(手掌)および足の裏(足底)に限局して強い発汗がみられるものを、手掌多汗症・足底多汗症と呼びます。
これらは多くの場合、明確な基礎疾患を伴わない原発性(一次性)局所多汗症に分類されます。
2.発汗の生理学的機構
発汗は主にエクリン汗腺によって行われ、体温調節や皮膚の保湿に重要な役割を担っています。
手掌・足底にはエクリン汗腺が非常に密集しており、これらは特に**精神的刺激(緊張・不安・集中)**に強く反応します。
発汗は以下の経路で制御されています。
- 視床下部の体温調節中枢
- 自律神経系(交感神経)
- アセチルコリンを神経伝達物質とする発汗神経
多汗症では、この交感神経系が過剰に興奮した状態が持続すると考えられています。
3.手足の多汗症の発症メカニズム
手掌・足底多汗症では、体温上昇がない状況でも、
- 精神的緊張
- 集中
- 社会的ストレス
- 感情の変化
といった刺激を契機に、発汗中枢が過敏に反応し、汗が大量に分泌されます。
これは汗腺自体の異常ではなく、神経制御の過剰反応による機能的障害と理解されています。
4.主な症状の詳細
(1)手掌の症状
- 手のひらが常に湿っている、または汗が滴る
- 紙が湿って破れる、文字がにじむ
- ペンや工具、スマートフォンが滑りやすい
- 握手や接触を避けるようになる
- 冬季や冷房下でも発汗が持続する
(2)足底の症状
- 靴の中が常に湿っている
- 靴下が短時間で濡れる
- 足がふやけやすく、皮膚トラブルを起こしやすい
- 靴の劣化や臭気の原因になる
- 長時間の歩行や立位が不快になる
これらの症状は左右対称に現れることが多く、日常的かつ慢性的に持続します。
5.身体的・皮膚学的影響
過剰な発汗により、以下のような二次的問題が生じることがあります。
- 皮膚の浸軟(ふやけ)
- 角質の脆弱化
- 接触皮膚炎
- 白癬(いわゆる水虫)などの感染症リスク増加
- ひび割れ、痛み
これにより、痛みや歩行困難を伴うケースもあります。
6.精神的・社会的影響
手足の多汗症は外見上は軽微に見える一方、心理的・社会的負担が非常に大きい疾患です。
- 他者に気づかれることへの強い不安
- 対人関係の回避
- 自尊心の低下
- 緊張 → 発汗 → さらに緊張、という悪循環
- 学業・職業活動への支障
これらは性格や精神的弱さではなく、自律神経系の機能異常による症状です。
7.症状の特徴と鑑別点
手掌・足底多汗症には以下の特徴があります。
- 小児期~思春期に発症することが多い
- 睡眠中は発汗が軽減または消失する
- 運動や気温に関係なく発汗する
- 家族内に同様の症状を持つ例がみられることがある
これらは、全身性の多汗や感染症による発汗との鑑別に重要です。
8.日常生活への長期的影響
慢性的な手足の多汗症は、
- 作業効率の低下
- 職業選択への影響
- 対人不安の増強
- QOL(生活の質)の低下
など、長期的に生活全体へ影響を及ぼします。
9.医学的理解の重要性
手足の多汗症は、治療や支援の対象となる医学的状態であり、「体質」や「気にしすぎ」として片付けるべきものではありません。
正しい理解と評価により、症状の軽減や生活の改善が期待できます。


