アダルトチルドレン(AC)とは、1980年代にアメリカで生まれた言葉で、決して障害や病気といった問題ではなく、子ども時代、機能不全家族を生き抜く過程で身に付けた「性格上のクセ」「習慣化したクセ」のようなものです。
元々は、アダルトチルドレン(AC)は、アルコール依存症の親に育てられた子供(adult children of alcoholic)のことを指します。
アルコール依存症の親をもつ子どもたち(COA:Children ofAlcoholism)が大人になったときに「対人関係の問題」や「生きづらさ」に悩み苦しんでいることが多く、「大人になったCOA」つまりACOA(AdultChildren ofAlcoholism)は、相手の評価に過敏になり自分に自信がもてない、または自分の存在価値が分からず、酒・ドラッグ・仕事などに溺れてしまう、対人関係が上手くいかず、居場所のなさ、生きづらさを感じる、というものです。
そして、最近では、アルコール依存症の親に限らず、同様の特徴が生じている機能不全家族の中で育てられ、大人になってからも何らかの傷を抱えている人のことを「アダルトチルドレン」と呼んでいます。家庭内で弱い立場にある人に、身体的・精神的なダメージを与えることで、子育てや生活などが機能していない家庭のことです。たとえ、外から見る限り健全な家庭でも、子どもに過剰に期待・甘やかしをする親、仕事に依存する父親・夫に依存する母親なども、やはり「機能不全」ということになります。
これらの家庭の子どもは、家庭を支えるために、例えば母親の愚痴の聞き役をしたり、幼い弟妹たちの親代わりになって面倒をみたりと、期待される役割を演じ「よい子」としてふるまいます。機能不全家族の中で生きていくための方法なのですが、家から離れてひとりで生きるようになると、人間関係に行きづまってしまいます。自分がなんのために生きているのか分からなくなったり、緊張や不安感で疲れてしまったり、自分の感情を素直に表現できないということがおきるのです。
自分の行動、思考、感情や人間関係に支障をきたしたり、理由なく孤独感に見舞われたり、友人関係や会社での自分の役割、自分の人生の選択などさまざまな場面で違和感を持つことがあります。
アダルトチルドレンは、自分で認識しているかは別として、子供の頃に体験したトラウマや傷ついた経験によって、感情が不安定で、思考に偏りがでるように育ってしまうため、自分で解決できない問題が多いとされます。無力な子供は、本来であれば大人に守られるべき存在ですが、そうされなかった子供たちは、生きるために自分の感情を押し殺して、その過酷な環境に順応していきます。その結果、大人になっても自我状態が子供のままで、感情のコントロールができなくなってしまい、自分を犠牲にしたり、あるいは、自分が生きている価値を見出せなくなってしまいます。とくに、反抗期の無かった子供は気をつける必要があります。子供らしく親に甘えてわがままを言えなかった「よい子」は、たくさんのことを押し殺してきたはずです。
症状
アダルトチルドレンによって以下のような様々な問題が生じます。
1.精神障害
不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、うつ病、気分障害、双極性障害、境界性パーソナリティ障害、自己愛パーソナリティ障害、解離性障害、適応障害、等といった診断名がつけられたりすることが多いです。つまり、アダルトチルドレンといっても、様々な症状や問題があり、状況や状態もまちまちです。
2.共依存
ACは、アルコールやタバコや人に陥るケースが多くみられます。
3.極端な人間関係
過度に人間関係から引きこもり、親密な付き合いを避けたりします。しかし、反対に過度に人に依存し、相手のためなら何でもするといった没頭をしてしまうときもあります。また、通常の人間関係を築いていたりしても、心から信用すること信頼することができず、疑心暗鬼を常に持っており、表面的な付き合いに終始することもあります。そうした意味で極端な人間関係に陥ってしまいがちです。
そうした中でアダルトチルドレンの心の中では、憎しみの気持ちと人と親密になりたい気持ちが同時並行に存在し、葛藤していることが多いようです。
4.否定的な自己像
アダルトチルドレンは自身のことを過度に否定的に見ており、自己評価や自尊心は非常に低いことが多いです。そのため、自分自身のことを大切にできなかったり、傷ついても平気なように見えたりすることもあります。時には自分のことを犠牲にして相手に尽くそうとしたりします。
5.自殺・自傷
こうした否定的な自己像や否定的な人間関係が繰り返されると、生きていくことに希望を持てず、将来に期待することもできず、苦しみばかりがあるように思えてしまいます。そうなると、生きていくことよりも死ぬことの方が苦しみから解放されるように思えてしまいます。そうしたときに衝動的に自殺に至ってしまうことも多いようです。
6.世代間連鎖
親との関係の中で起こったことが、自身が子どもを持った時、その子どもとの間で同じようなことを繰り返してしまいます。親が子に、子が孫にというようにバトンを渡すように受け継がれていきます。
親から愛されなかったのに自分の子どもを愛せるのだろうか、という不安と苦しみは相当大きいようで、人によっては子どもを作ることや結婚そのものを忌避してしまうことがあります。
7.生きづらさ
精神障害、極端な人間関係、否定的な自己像、自殺、自傷、世代間連鎖を見ても、生きていくことに希望や期待を見出すことは困難であり、常に生きづらさを抱えながら生きています。